2/15(火)NHK、総務省それぞれからNHK新年度予算案について説明を受けました。予
2/15(火)NHK、総務省それぞれからNHK新年度予算案について説明を受けました。予算案それ自体よりもBS1スペシャル「河瀨直美が見つめた東京五輪」の虚偽テロップ問題、テレビ放送そのものがネット番組全盛時代に生き残るためどうするか、に話が集中しました。
昨年12/26にNHK番組「BS1スペシャル『河瀨直美が見た東京五輪』」が放送。後編にて、五輪反対デモに参加していないある男性が登場した際に「五輪反対デモに参加しているという男性 実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と虚偽のテロップを流しました。
この番組は東京五輪公式映画を撮影する河瀨直美さんをNHKスタッフが取材する、という「ドキュメンタリー」。河瀨直美さんは山形国際ドキュメンタリー映画祭でも、カンヌ映画祭でも受賞した経歴をもつ映画監督です。
問題のシーンは国立競技場の近くにいた男性に番組スタッフがインタビューしている場面。NHKスタッフが取材した映像に(当日の放送では使われなかったのですが)その男性が「五輪反対デモは行かない」という趣旨の話をしていることが記録として残っており、その確認すら番組放送前にされていなかった❗ と驚くべき内容が報告書に書かれています。ドキュメンタリーは本来、事実を記録した映像。それなのに事実と異なる映像を流してしまったのですから、これではドキュメンタリーとはいえません。
また、報告書によれば何度か試写された際にテロップが変更されています。「かつてホームレスだった男性 デモにアルバイトで参加していると打ち明けた」→「五輪反対デモの参加者 実はアルバイトだと打ち明けた」→「五輪反対デモに参加しているという男性 実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」テロップが変わるたびに表現がきつくなっています。「五輪反対デモに参加している人はお金で動員されている」というゆがんだ認知が貫かれています。「人間」の姿を描くドキュメンタリー番組が多いなかで、このドキュメンタリーを制作したスタッフには「ヒューマニティー」(人間らしさ、人間の情味に富んでいること)への敬意に欠けていたのはないでしょうか❓
(なお、報告書によれば、この男性は「ご飯代ぐらいのお金をもらっていろいろなデモに参加している」という趣旨の話をした記録があります。しかしながら「五輪反対デモには行かない」と話したという記録もありますので問題のテロップは明らかに虚偽です)
NHKではすぐれたドキュメンタリーを数多く放送してきましたし、ドキュメンタリー制作に関わる素晴らしい人材がいたとも聞いていますが、このようなドキュメンタリーを放送するとは「NHKは一体どうなってしまったのだろうか❓」悲しい気分です。
一方、総務省の方からは「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」での議論についても説明をいただきました。ネット放送全盛の時代になりつつあり、NHKと民放、特に地方局について、これからどうやって「生き残り」を果たすのかが課題。
テレビ番組が映らないテレビ(チューナーレステレビ)がすでに販売されていて、評判だそうです。このテレビはスイッチを入れればすぐにyoutube、ネットフリックス、アマゾンプライムなどのネット番組に接続できるというもので、テレビ放送を全く受信できない仕組み。ネット番組のみになれば、テレビ放送や新聞報道を通じて「誰もが同じ番組を観る」「誰もが大事な情報を知っている」という状況がなくなるおそれもあります。
総務省の検討会では民放の規制(集中排除規制、あまねく放送する義務)の緩和の議論もあるようです。テレビ放送をネットで同時中継する議論もされています。テレビ放送の世界では時代の転換点に来たようで、これからも「検討会」の議論に注視していきます。